今バリ島はメイン通りも海も日本人だらけ。
夏休みを外したりピーター達が続々とバリへやってきている。
歌織はこの時期が何気に好きなのだ。
我がフォーティンホテルにもたくさんの日本人客で賑わう。
歌織の友達も初バリ、そして女の子一人でバリ島へやってきた。
もちろん宿泊先はフォーティン。歌織もまだ旅行客の頃はいつもここを利用していた。
仕事が終って友達を迎えにフォーティンへ。
すると「歌織ちゃーん!!」と、後ろで誰かが呼んでいる・・・。
「あーー!!久しぶりっ。いつ来たの〜?」と、もうバリでは3回会っている
日本人リピーターの人にばったり遭遇。「ご飯食べに行こうか。」と、
まるで日本でずっと友達だったかのように行動を共にするのである。
そう、この時期はバリ好きのリピーターにたくさん会えるんだ。
 
 ご飯を食べえてホテルに戻ると「あ、こんにちはー」と、
リピーターの友達に挨拶する男の子2人。彼らもバリは2回目で大学最後の休みをバリ島で過ごしていると言う。
「折角だからみんなで楽しく飲もうよ」と、コマンのワルンへ。
みんなバリが好きだからスッカリ話も盛り上がる。
その次の日からは昨日のメンバーの友達がまた2人バリへと到着。
そしてリピーターの友達が波乗り仲間を連れて来て総勢9人で毎日楽しい話で盛り上がる。

初めは戸惑っていた歌織のお友達もスッカリこの人との出会いの多さに感動し、
「無理でも一人できて本当に良かった。また絶対来る!!」と、既に次の渡バリ計画を練っていた。(笑)
 その中の男の子、ケン君とトンタン(通称)、そして歌織と友達4人で話す機会があった。ケン君は歌織と友達と同じ25歳。
もうバリへは何回も来ている常連さん。某有名企業を先月退社し、丸々2ヶ月間「自分らしく」をテーマにバリへ波乗りをしにやってきた。
実は友達も某有名銀行を退職し、その後バリへとやってきたのだ。
「同じ25歳、みんな脱サラ組じゃん。」何てケラケラ笑いながら自分たちのこれまでの人生を語りだす。
歌織も含めてそれぞれ歩き出した道は違うけど、3人共通して思った事は「25歳って何か次のステップを踏めるのに一番いい歳だよね。」って事。
この時期って誰でも「今の人生このままでいいのかな。」って、ふと自分に問いかける時だと思うんだ。
そしてそこからは勇気の問題。「自分らしく生きる」って言うのは本当に難しい事だし、実際障害も多い。
毎日通勤電車に揺られながらふと、窓に映った自分の顔を見て「生きてるんだか死んでるんだかわからない。」ってショックを受けたあの時の自分を思い出す。
それでも必死に「これが人生なんだ」なんて言い聞かせて自分を考える事から逃げていたし、実際何か行動をおこして失敗するのを恐れていた。
3人とも話していてやっぱり同じような悩みをかかえていたみたい。それでも今はそれぞれ自分の道を探して今の現状の話をしている時はみんなとても輝いているのだ。
何かに吹っ切れたようなそんな感じ。「良かったよね。」って3人いい笑顔。
 
 ふいに「おれ・・・」と、トンタンが口を開く。トンタンは就職も無事決まり、あとはのんびり4月まで社会人になるのを待っている大学4年生。社会人には羨ましい身分である。
「おれ・・・何か違うんですよね。今の自分って。」ポツリポツリと語りだす。今まで両親の言う事を素直にまっすぐ聞き入れて、何の迷いもなく就職まで頑張った彼。
大学だって指折りの有名校だし就職先も誰もが知っている企業である。
「それで何の迷いがあるんだ?」と、脱サラ3人が口を出す。説得力も何もあったもんじゃないが・・・。(笑)
「俺、親父の事をすごい尊敬してて受験とか就職とか全部親父の言う事をそのまま受け入れて来たんです。自分の言ってる事とかも全て親父の受け売りみたいな感じで。
でもそれが通じたのって高校までなんですよね。大学入るとみんな自分ってものを持ってて、今の俺って何か違うんですよね・・・」トンタンが言う。
 
 これを聞いて脱サラ3人は驚く。「大学生のうちからちゃんと自分に向き合っているなんてたいしたもんだ。」と。
就職を前にして今の自分がこのまま社会人になっていいものかと悩んでいる様子。

 新しい人生を踏み出す前って誰でも不安がつきまとうもの。歌織だってバリへ住もうと決めてから実際バリへ行くまでの半年間は目に見えない不安がズシっと乗っかってきて「本当に大丈夫かな・・・」って思ったものだ。でもやってみると案外簡単なもので、一歩踏み出した瞬間に想像できないくらい一気に視野が広がる。
 「3人を見てるとすごい羨ましいです。みんな自分ってものを持ってて、すごい堂々としてて・・・」と、トンタン。「ははっ。そりゃ一応社会人やってたしな。」と、ケン君が苦笑。
自分が輝いているなんて自分では案外わらからないもの。人が人を見て「この人すごいな。」って思える人ってやっぱりその人が「自分のスタイル」って言うものをしっかりもってて周りが何と言おうと左右されず、自分の思う通りに進んでいる人だと思う。歌織もバリでそんな人に何人も会っているし。別に会社を辞めた事がすごいことじゃなくて、会社に入ってバリバリ仕事して「俺、仕事楽しくてしょうがない。」って言っている人だって歌織にとってすごく大きな人に見えるしね。
 
 そんな事を語っているうちにスッカリ朝方である。「うわぁ〜もう朝だよー。一体何時間語ってたんだ〜?」と、誰もがビックリ。
でもさ、こんなのってすごい素敵な時間だといつも歌織は思う。
だって日本では絶対会うことのできない人達に、しかもバリ島で会って、こうやって自分達の人生とか考え方についてじっくり語れるのってないと思うんだ。
逆に日本だったら友達同士、気恥ずかしい所もあって「人生」について激論する何てこと滅多にないし。
これもまたバリマジックなのかもしれない。大自然に囲まれてのんびりゆっくり過ごして、自分の周りにはいない人たちと触れ合うと、自然と「自分」を考えざるを得なくなるのかもなぁ。現に歌織もバリに来て「人生飛び出してみよう!!」って思った一人だし。
 
 最後に、「俺、本当にバリに来て良かったっす。こうしてみなさんと話せただけでも本当に良かったっす。」って目頭を熱くさせながら言ったトンタンの言葉が忘れられない。ショッピングも観光もいいけど、こんな人との出会いがたくさんあるバリ島もまた、歌織は大好きだ。
 
 こうやって日々、自分と向き合いながら暮らしていけるってすごく素敵な事じゃない?彼らと会ってまた、今の自分に妥協する事無く前向きに進んでいこうと改めて思った。
「またいつかバリで会おうね。」と、去って行った彼の笑顔が少し自信に満ちて見えたのは朝の光のせいだろうか。。。


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歌織の独り言

18 September 2002